式辞

 東北生活文化大学、東北生活文化大学短期大学部を代表いたしまして、ここにお集まりいただいた皆さんに御入学のお祝いを、加えて成人になられたお祝いを、申し上げます。また、今日を待ち望んでおられた保護者の方々に対しましても、衷心よりお祝い申し上げます。

 宮城県からは、オミクロン株による第六波の拡大を防ぐ「緊急特別要請」が先月21日に終了しましたが、今月10日まで「再拡大防止期間」として感染防止対策の強化が謳われております。本県の累計感染者は、6万人に至らんとしており、依然として4月3日現在の感染者数は6501人となっております。このようなコロナ禍のため、入学式はここ体育館において規模縮小・時間短縮により挙行されることとなり、大変残念ではありますが、来賓・保護者には御遠慮いただく形となりました。しかし、本日このように挙行できますことは、教職員一同にとりましても、大きな喜びでございます。

 栄えある今日を迎えた新入生は、東北生活文化大学 家政学部家政学科服飾文化専攻 14名、同健康栄養学専攻44名、美術学部美術表現学科64名の計122名。そして 東北生活文化大学短期大学部 生活文化学科食物栄養学専攻24名、同子ども生活専攻31名、の計55名。大学、短期大学部、合計177名の新入生であります。そして、家政学部家政学科健康栄養学専攻3年次編入学生は2名であり、総計179名となっております。

 三島学園東北生活文化大学、ならびに短期大学部の歴史を紐解くと、明治33(1900)年、東京で法学を学んだ三島駒治が、「東北法律学校」を設立、続いて三島駒治、よし夫妻によって創設された「東北女子職業学校」にまで遡ります。一昨年、令和2年10月27日に創立120周年を迎えており、東北の中心地仙台に根付いた、伝統ある教育機関としてこれまで親しまれてきました。

 三島学園には、三島よし校長の親族である齋藤實(まこと)子爵(第30代内閣総理大臣)御手植えの紅梅白梅が旧正門近くで毎春咲いています。「令和」という元号のもととなっている「梅花の歌 三十二首」に、「時に、初春の令月にして気淑く風和はらぐ」なかとありますが、清く、正しく、健やかに、時代とともに年輪を重ね、咲いてきた梅花であります。

 三島学園は、明治期の西洋列強の「グローバルな地球社会」の一員となるべく、近代化に努めている文明開花の時代、衣食住という「生活と文化」を基本に据え、「実学」という現実の社会生活に貢献する教育研究機関として出発いたしました。そして、明治、大正、昭和、平成と、東北における「生活と文化」に関する近代化の一翼を担ってきました。昭和26年(1951)三島学園女子短期大学、昭和33年(1958)三島学園女子大学が設置され、三島学園創立以来の女子教育の伝統を受け継ぐと同時に、生活することの原理、原初に立ち返り、実験、実習を重ね実証していくという教育と研究の姿勢を貫いてきました。

 いわば、福沢諭吉が「学問のすすめ」で語る「サイエンスとしての実学」を大事にしていると言えないでしょうか。福沢諭吉は、冒頭で、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」といへり。されば天より人を生ずるには、万人は万人みな同じ位にして、生まれながら貴賎上下の差別なく、万物霊のたる身と心との働きをもつて、天地の間にあるよろづの物を資り、もつて衣食住の用を達し、自由自在、互ひに人の妨げをなさずして、おのおの安楽にこの世を渡らしめたまふの趣意なり。」と述べ、「もつばら勤むべきは、人間普通日用に近き実学なり」と主張しています。

 第二次世界大戦後、日本国憲法が発布され、学問の自由が保障され(第23条)、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」(第25条)として生存権が認められ、さらに「すべての国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。」(第27条)ことになりました。

 「東北生活文化大学」という校名に使用されている「生活」と「文化」は、日本国憲法第25条で謳われている生存権を認める文中に使用されています。現在、このような実学の伝統が現代に生かされ、東北生活文化大学家政学部家政学科では、服飾文化専攻と健康栄養学専攻、美術学部美術表現学科があり、東北生活文化大学短期大学部生活文化学科には、食物栄養学専攻と子ども生活専攻があります。東北、さらには日本全国を見渡しても、これら「生活と文化」を総合的に教育研究する唯一無二の教育研究機関となっております。

 今後、さらに、「グローバルな地球社会」の大波が押し寄せ、高度情報化社会に対応する人材養成が急務とされています。そのためには、コミュニケーションスキル、数量的スキル、情報リテラシーなど実生活に必要なAI技術、それと、人文・社会科学、文化・藝術などの幅広い教養の涵養が求められています。時代の変化に合わせて積極的に社会を支え、論理的思考力を持って社会を改善する資質を有する人材、すなわち「21世紀型市民」を多く誕生させる教育が求められており、一様ではなく、むしろ、一人ひとりが異なる強みや個性を持った多様な人間が求められています。このような人材養成を担う大学機関として、本学はその役割を演じようと、スタートラインに並んでいます。

 春に梅花、桜花咲きほこる、この虹の丘で過ごす日々を胸に抱き、集い、末長く楽しんでいただきたいと思っています。そのためには、クラブ活動、体育祭、大学祭、ファッションショーなど、学生主体の学園生活の舞台にも精を出していただきたいと思っております。

 学生時代の友情は一生続くものです。そのためには、本学の校訓「励(はげ)み、謹(つつし)み、慈(いつくし)み」が必要なのかもしれません。そして、本学のこの校訓を胸に刻み、心の奥深くに宿る本来の「自分自身、自己」の姿を、一生懸命勉学していくと、ふとみずからが自覚できることがあるかもしれません。そうなりますと、個人としての主体性が発揮でき、今後の人生百年時代の楽しみや自由を享受できるのではないでしょうか。このような自己探求を一人ひとりが実践していきますと、多様性に満ちたエネルギーが束となり、「ローカルな地域社会」、すなわち東北の生活と文化の豊さが生み出されてくるのではないでしょうか。

 21世紀は、「グローバルな地球社会」と「ローカルな地域社会」が組み合わさり、結びつかなければなりません。その理想的な形を実現すべく、皆さんをはじめ、若人の活躍する21世紀であると、わたくしは確信しております。東日本大震災から11年が経過しましたが、ここにお集まりの皆さんが社会に貢献できることがきっとあるのです。

 教職員一同、同窓会一同、皆さんの御入学を心からお祝いし、本来の自己探求に励み、それぞれの専攻での勉学に打ち込み、ひいては「地球社会」および「地域社会」の一員として成長なさることを祈念し、式辞といたします。

令和4年4月4日

東北生活文化大学・東北生活文化大学短期大学部
学長 佐藤一郎

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生文大通信

先輩が入学を決めた理由

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