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シラバス(公開版)

2024年度 

 
  美術特別講義Ⅲ
[ D-3-g-11-1-2 ]
 

 単位(総授業時間数+自習時間):1(15 + 30)
 対象学科:美表2年
 授業形態:講義 学期:前期 必・選:選択
 美術表現学科専攻科目
 佐 藤 一 郎

授業概要
1.謝赫の「畫の六法」、すなわち「気韻生動、骨法用筆、応物象形、随類賦彩、経営位置、伝模移写」を取り上げ、西洋画と関連づけ、「素描の心得」を考察する。2.アリストテレスの「見ることの重層構造」と、ヤン・ファン・エイクの「描くことの重層構造」の対応関係を考察する。3.一点、二点透視図法による、各人の視高と視距離による空間設定をし、床面を作図する。 4. その床面に、ある立体物を置き、二点透視図法を用い、描く。5.転写後、墨汁と面相筆で輪郭線素描をする。さらに暗部に陰影を付け、肉付けを行い、量感を描出する。その際、立体物に生じる「陰」だけでなく、床面に投影される「影」をも描き込む。6. 地透層という中間調子で画面全体を塗る。7.その後、テンペラ絵具で「白色浮出」を行い、明部からの肉付けを行う。8.その結果、「素描」が形づくられ、これを下敷きに、彩色をほどこす。

授業の到達目標
 
学位授与の方針との関連
 
・「論画六法」を通して、「絵画とはなにか」の基礎知識を理解する。
0.16 0.16 0.2 0.16 0.16 0.16
 
・「見る」を「描く」行為に置換するための絵画材料とは何かを理解する。
 
・地透層(インプリマトゥーラ Imprimatura)を行う理由を理解する。
 
・テンペラ絵具と油絵具との違いとはなにかを理解する。
 
・比例(Proportion)+遠近法(Perspective)=構図(Composition)
 
・一点透視図法および二点透視図法による「線遠近法」を理解する。
 

授業計画
 
内容 自習(事前・事後学習の内容)
 
1 「畫の六法」の「気韻生動、骨法用筆、応物象形、随類賦彩、経営位置、伝模移写」を取り上げ、西洋画と関連づける。 「気」使った熟語を、ノートに描いてみる。「応物象形」「随類賦彩」に、返点を付ける。
 
2 アリストテレスの「見る構造」とファン・エイクの「描く構造」の対応関係を考察する。。 「ものが見える」ための前提条件を考える。「ものを描く」ための前提条件を考える。
 
3 厚紙①:立体物の展開図を切り抜き、それを組立てる。
厚紙②:床面を設定し、市松模様の文様を作成する。
この立体物を、イメージする。文様の最小単位が連結すると、全体がどうなるか考える。
 
4 アルシュ紙①-1:透視面(画面)を設定し、二点透視図法で描く。その際、厚紙②の床面に置かれた立体物を参考とする。 鑑賞者の視高、視距離による視心と画面の視心を一致させる展示方法はどうすれば良いのか。
 
5 テンペラ媒剤(メディウム)の製法。アルシュ紙②-1:アルシュ紙①の原寸大素描をアルシュ紙②に転写する。その際、トレシングペーパー裏面に油絵具(+同量の揮発性油)を塗る。 水性媒剤と油性媒剤が混じり合い分離しない媒剤を、テンペラまたは乳濁液(エマルション)という。通常は鶏卵を使用する。
 
6 アルシュ紙②:転写された描線を墨描きし、褐色で陰影付けする。次に、画面全体に地透層を塗り、中間調子を設定する。 墨汁による輪郭線描が基本だが、できれば明暗の陰影(キアロスクーロ)も描き入れる。
 
7 アルシュ紙②:白色浮出して、対象物の量感を形づくり、対象物を取り囲む空間をも意識し、乾燥後彩色する。 暖色の下素描には、寒色の地透層を塗布する。白色浮出に微量の有彩色絵具を混ぜる。
 
8 批評会:学生が自己制作作品を前にして、批評する。他の学生の作品をもよく観察し、発言することが望ましい。 油絵具チューブに記されている記号(透明、半透明、被覆絵具)を調べる。
 

履修上の注意
■学生の準備物:筆記用具、ノート、水彩道具一式、鋏、カッター、定規(30㎝前後)
■大学の準備物:アルシュ(300g/㎡ 18㎝× 26㎝)水彩紙各自2枚、方眼厚紙1枚、墨汁、コピー用紙(A4,A3)

成績評価方法・基準
授業態度、プレゼンテーションを含む平常点50%、アルシュ紙①、②に描いた描画作品(2枚)50%で評価する。

教科書
●適宜、プリント(パワーポイント+参考資料をも含む)を配布。●『絵画制作入門』佐藤一郎+東京藝術大学油画技法材料研究室編 東京藝術大学出版局 ●『トンプソン教授のテンペラ画の実技』佐藤一郎監訳、三好企画

参考書
●『マックス・デルナー:絵画技術体系』佐藤一郎訳、美術出版社 ●『クルト・ヴェールテ:絵画技術全書』佐藤一郎訳、美術出版社 ●『絵画技術入門』佐藤一郎著、美術出版社

備 考
「美術特別講義III」は、12月後半の集中講義期間の二日間午前午後を通して行う。質問は、適宜受け付ける。

 
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