本日、4月4日(木)、令和6年度入学式を挙行いたしました。暖かく穏やかな日和で、新入生たちを迎えることができました。

令和6年度 入学式 学長式辞

 令和6(2024)年元日、能登半島地震があり、自然の力は暴力的であり、破滅的な能登の姿を目の当たりにしました。震災によって亡くなられた、あるいは被害を受けられた人々に哀悼の意を捧げたいと思います。
 一方、コロナ感染禍、ウクライナ、あるいはパレスチナにおける戦争と、人間の力も暴力的な姿を曝しております。時間、空間が短縮され、網の目のように形成された、この「グローバルな地球社会」で起きるさまざまな事象は「ローカルな地域社会」でも、その影響から逃れ出ることができません。
 しかしながら、世界中を席巻したコロナウイルス禍は終息を迎えてきました。このような状況のもと、東北生活文化大学ならびに東北生活文化大学短期大学部の入学式を、ほぼコロナ禍以前の式次第に近づき、挙行できることとなり、大変喜ばしいと思っております。

 本日、東北生活文化大学は、家政学部家政学科服飾文化専攻が18名、家政学科健康栄養学専攻が46名、美術学部美術表現学科が48名、計112名の新入生を迎えました。
 さらに、家政学科健康栄養学専攻3年次への編入生として、4名を迎えました。
 また、東北生活文化大学短期大学部は、生活文化学科食物栄養学専攻が33名、子ども生活専攻が13名、計46名の新入生を迎えました。
 総計162名の皆さん、入学および編入学誠におめでとうございます。同時に、これまでの皆さんのご努力に敬意を表しますとともに、皆さんを支えてこられましたご家族や関係者の皆さまにお祝い申し上げます。

 さて、世界は、すでに、「グローバルな地球社会」となっており、政治、経済、法律、生活、文化のあらゆる領域が、互いに密接につながっております。また一方、このような時間、空間の短縮に伴い、ICT(情報通信技術)、AI(人工知能)が急速に進展しております。このような状況を踏まえ、本学の教育研究にも、ICT、AIのスキルを積極的に取り入れなければなりません。
 一方、このような状況が進展しますと、人間の生活と文化はややもすると、一様化、均一化の方向に向かってしまいます。その結果、国、地域ごとに培われてきた伝承的および伝統的な生活と文化がそれぞれの個性を失い、無色、透明な状態となり、個人一人ひとりの違いがなくなってくるようにも思えます。このような、いわゆる自己疎外の問題を克服するには、わたしたちはどのように、これから生きてゆけばよいのでしょうか。

 歴史を振りかえれば、明治維新後の日本は、「グローバルな地球社会」に参加を強いられ、あらゆる領域において、西洋化、文明開化が叫ばれた時代でした。そのような歴史の流れのなかで、西暦1900年、明治33年、三島駒治による東北法律学校開校が三島学園の始まりでした。3年後、妻よしが校長になって、東北女子職業学校が創設されました。この東北女子職業学校は、創立当初から、女子の社会における自律の確立と地位の向上を願い、いわゆる「手に職を付ける」という実学(サイエンス)教育を一貫して実践してきました。戦前においては一時期、第30代内閣総理大臣齋藤實が本学の設立者となっておりましたが、その当時、師範科、高等師範科が設置され、卒業生は無試験で小学校、中学校教員免許状を授与されておりました。
 現在も、その伝統は受けつがれ、令和5年度大学において、教員免許状取得者は、51名となっており、教員採用試験を合格し、採用先が中学校、高校に決まった卒業生は、6名、講師採用は2名となりました。短期大学部において、幼稚園教諭免許状取得者は22名となっており、採用先が幼稚園に決まった卒業生は九名と聞いております。

 現在、本学家政学部、および短期大学部生活文化学科では、これまで培ってきた家政学教育の伝統を生かし、現代に生きる新しい生活文化を生み出そうとしています。そのために、人文科学、自然科学に基づく理論面のバックアップ体制と、現代社会の多様化、複層化に対応しようと、カリキュラム編成に努力しております。
 さらに、 5年前に「美術学部美術表現学科」が新たに発足しました。仙台には、東北地方の中心都市であるにもかかわらず、これまで美術分野全般にわたって専門的に教育研究にたずさわる大学、学部がなかったのです。「グローバルな地球社会」の構造的変容に対応しての人材養成が急務となり、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムを学習し、美術、藝術を、そして生活と文化を、追求する人間中心の社会を作り出さなければいけません。
 今日列席しています新入生の皆さんの大多数が、「読み書き算盤」のみならず、コンピュータを駆使する「手に職を付け」、さまざまな技術と資格を武器に、東北、宮城、仙台の地域に貢献しうる人材として育ってほしいと願っております。
 この「グローバルな地球社会」で働き、自分自身を見失わず、主体的に生きるには、本学での学生生活をどのように過ごしたらよろしいのでしょう。それには、本学の校訓「励み、謹み、慈み」がとても大切であると、わたくしは感じています。
 この本学の校訓を胸に刻み、勉学に、そしてクラブ活動をはじめとする学友会活動に、仲間と一緒になって、真摯に励んでください。そのように集中すると、普段気が付かない、心の奥深くにある本来の「自分自身、自己」の姿を発見することがあります。そのような心の声を聞こうとすることができないと、「自分自身」の、氷山の一角に過ぎない、表面に見出される「自意識、自我」に頼ってしまいます。そうなると、短絡的に結果を求める、たとえば偏差値至上主義や、極端な拝金主義も生まれてしまうのです。

 真の自分自身、自己を発見し育むためには、今後、二年間、あるいは四年間、持続してこつこつと、各専攻に応じた、そして学生一人ひとりに課せられた課題をしっかりと取り組むことが肝要です。そして、孤独はいけません。仲間が必要です。明日、四月五日には体育館で、先輩たちによる「ウェルカムパーティー」が開催され、新入生のみなさんを待ち受けています。
 このようにして、仲間とともに、本来の真の自分自身、自己への探求が積み重なれば、束となって、みなさんの多様性に満ちたエネルギーの総体が生み出されてきます。それが、東北、宮城、仙台の新たな地方創生の原動力にもなるでしょう。21世紀は、「ローカルな地域社会」の理想的な形を実現すべく、新入生のみなさんをはじめとする若人の活躍する世紀であると確信しております。

 教職員一同、新入生のみなさんのご入学を心からお祝いし、本来の真の「自己自身」の探求に励み、「ローカルな地域社会」と「グローバルな地球社会」の一員として励み、謹み深く、皆を慈む人間に成長なさることを祈念し、式辞といたします。

令和6年4月4日
東北生活文化大学・東北生活文化大学短期大学部
学長 佐藤一郎

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生文大通信

先輩が入学を決めた理由

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