7名の学生たち(短大食物栄養学専攻5名・大学健康栄養学専攻2名)が、嚥下や咀嚼がむずかしい高齢者の方向けに、やわらかい「おせち料理」を考案・調理しました。

ソフト食、ムース食といわれるもので、調理した料理に水分を加え、ミキサーにかけて磨砕し、凝固剤を加えて冷やし固めた料理です。

高齢になり、歯を喪失したり、うまく飲み込めなくなった方に食べていただきたいと、学生たちがメニューを考案し、試作と改良を重ね、1日半かけて完成させることができました。

栗きんとん、黒豆、紅白かまぼこ、煮しめ、伊達巻、帆立いくら添え、鯛の焼き物、計7品です。

「煮しめ」は、野菜を柔らかく茹でた後、食材を取り出して水と一緒にミキサーにかけて滑らかな液体を作ります。凝固剤を加えて加熱して、野菜の形に成型し冷やします。

いろいろ試した結果、煮しめを美味しく作るポイントは、加水する水分は、野菜の煮汁やだし汁ではなく、水の方が素材の味がよく味わえるということです。

最後に、だし汁に調味料を加えたとろみつきの煮物の煮汁をかけて食べます。

にんじん、れんこん、たけのこ、しいたけ、さといも、さやえんどうのソフト食を、それぞれ調理します。

栗きんとんのソフト食も開発しました。くちなしの実を加えて黄色の鮮やかさを出したり、栗らしい形を再現するために、ダイヤモンドのシリコン型を使ってみました。

伊達巻、黒豆にも挑戦しました。素材が良質で、料理自体が美味しくないと、おいしいソフト食は作れないことを、何度も試作をしてみて実感しました。

素材の値段や質は、ピンキリなので、いろいろ試しました。材料費も手間もかかるソフト食です。

紅白のかまぼこは、色別に切り分けて丁寧に作りました。各かまぼこに、白はんぺん、だし汁などを加えて攪拌し、凝固剤を入れて加熱し、冷やして平たく成型し、花の形をした型で抜きました。

左は、三陸の魚介類を代表して、帆立といくらのソフト食の試作品です。帆立は貝柱とヒモを分けてミキサーにかけました。

いくらは、裏ごしをしてなめらかなソースにして、飾りつけすることにしました。鯛の塩焼きは、茹でた鯛に白はんぺんを加えたり、最後にバーナーであぶって焼き目をつけました。

後日、おせち料理の写真を見た佐藤学長が「ぜひ食べてみたかった」と言って下さった時、学生たちはとても嬉しそうでした。がんばった甲斐がありましたね。

栄養士は、365日毎日、給食を出すのに精一杯になりがちです。しかし、料理のコンセプト、見た目、食器、盛付次第で、多くの人に食を通して喜んでもらったり幸せな気持ちになってもらうことができます。

超高齢社会を迎えた日本の高齢者施設や病院で働く卒業生の栄養士たちは、毎日、摂食嚥下食(ソフト食、ムース食)に取り組んでいます。手間とお金と時間がかかるため、どこまで手をかけられるかが課題です。

摂食嚥下困難な方に安全に美味しく楽しい食事を提供することは、解剖整理学、臨床栄養学、ライフステージ栄養学(高齢期、障害者)、調理学、食文化など、様々な学びの応用編です。

学生たちが考案した優しくて美味しい「おせち料理」のソフト食レシピが、今後、咀嚼・嚥下が困難な方々が生活されている施設、ご家庭、地域に広まっていくことを願っています。

 

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生文大通信

先輩が入学を決めた理由

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