「自分」というテーマに107点のご応募をいただきました。
慎重に審査、検討を重ね、入賞作品等を決定致しました。
エントリーされた生徒の皆様、ご指導下さった先生方に厚く御礼申し上げます。
賞 | 学年 | 作品名 | 高校名 |
大賞 | 2 | 自己愛 | 東北生活文化大学高等学校 |
準大賞 | 2 | 香 | 北海道おといねっぷ美術工芸高等学校 |
優秀賞 | 2 | Memories | 宮城県白石高等学校 |
優秀賞 | 2 | 静/人物画 | 宮城県白石高等学校 |
優秀賞 | 2 | Jiff | 北海道おといねっぷ美術工芸高等学校 |
優秀賞 | 1 | 掴めない | 聖ウルスラ学院英知高等学校 |
優秀賞 | 1 | 側 | 東北生活文化大学高等学校 |
優秀賞 | 1 | My mind | 東北生活文化大学高等学校 |
優秀賞 | 1 | 残像 | 東北生活文化大学高等学校 |
優秀賞 | 1 | 霜晴 | 東北生活文化大学高等学校 |
優秀賞 | 2 | 音 | 東北生活文化大学高等学校 |
優秀賞 | 2 | 大脳作用 | 東北生活文化大学高等学校 |
佳作賞 | 3 | 空想渋滞 | 聖ドミニコ学院高等学校 |
佳作賞 | 1 | filament | 宮城県中新田高等学校 |
佳作賞 | 4 | 孤独 | 宮城県田尻さくら高等学校 |
佳作賞 | 2 | 揺れる | 北海道おといねっぷ美術工芸高等学校 |
佳作賞 | 2 | 二面性 | 福島県立会津学鳳高等学校 |
佳作賞 | 2 | 私の色 | 宮城県宮城野高等学校 |
佳作賞 | 3 | What is me? That is memory. | 宮城県富谷高等学校 |
佳作賞 | 1 | Like | 東北生活文化大学高等学校 |
佳作賞 | 1 | ないものねだり | 東北生活文化大学高等学校 |
佳作賞 | 1 | 虚ろ | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 己と人格 | 宮城県白石高等学校 |
入選 | 1 | もう1人の私 | 宮城県白石高等学校 |
入選 | 1 | 煌煌 | 宮城県白石高等学校 |
入選 | 2 | 境界 | 宮城県白石高等学校 |
入選 | 2 | 偶像 | 宮城県白石高等学校 |
入選 | 1 | 恐れ | 宮城県白石高等学校 |
入選 | 2 | 外と内 | 宮城県白石高等学校 |
入選 | 2 | 解放 | 聖ドミニコ学院高等学校 |
入選 | 1 | 努力 | 聖ドミニコ学院高等学校 |
入選 | 1 | 勇往邁進 | 聖ドミニコ学院高等学校 |
入選 | 1 | 日常 | 聖ドミニコ学院高等学校 |
入選 | 1 | 渦 | 宮城県岩出山高等学校 |
入選 | 1 | 天明 | 宮城県岩出山高等学校 |
入選 | 4 | 束縛 | 宮城県田尻さくら高等学校 |
入選 | 4 | 元私製作工場ホットライン | 宮城県田尻さくら高等学校 |
入選 | 3 | 胡蝶の夢 | 学校法人羽黒学園羽黒高等学校 |
入選 | 2 | 表現 | 福島県立会津学鳳高等学校 |
入選 | 2 | 舞色 | 宮城県宮城野高等学校 |
入選 | 2 | 対面 | 宮城県宮城野高等学校 |
入選 | 2 | vivid | 宮城県宮城野高等学校 |
入選 | 1 | 仲間と | 宮城県古川工業高等学校 |
入選 | 3 | 解 | 宮城県富谷高等学校 |
入選 | 1 | HELP | 聖ウルスラ学院英知高等学校 |
入選 | 1 | 脳の中 | 聖ウルスラ学院英知高等学校 |
入選 | 1 | 心 | 聖ウルスラ学院英知高等学校 |
入選 | 2 | 『自分』 | 聖ウルスラ学院英知高等学校 |
入選 | 2 | 桃色の呪い | 聖ウルスラ学院英知高等学校 |
入選 | 2 | 開花 | 聖ウルスラ学院英知高等学校 |
入選 | 1 | 自分 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 虚ろな感情の踊り場 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 黒に還る | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 観客的自分探求 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 私の花 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | The future to Shine. | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 感情 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 探究心 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 私の宝物 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 深愛 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 私の絵 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 自分 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 悩み | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 染まる | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 自分だなぁ~ | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 梅雨 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 偽り | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 27 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 葛藤 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 美 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | G | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 原材料 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 余裕 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 朧 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 左り向き | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 天つ空 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 猫と私 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 忘れんぼう | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 自堕落 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 幼い頃 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | S | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | オトメ | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 彩 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 自分構成 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 桔梗とリス | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 名前 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 超越 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 俺の相棒たち | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 記憶 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | Inside me | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | あい | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 緑 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 妹 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | あかよろし | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 理想の虹 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 2 | 繋ぐ | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 2 | 私に必要なモノ | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 2 | 揺蕩う | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 2 | 心情 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 2 | カラーバー | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 2 | 夢を運ぶ者 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 3 | 午 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 3 | soft candy | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 3 | 前進 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 内観 | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 鮮やかに | 東北生活文化大学高等学校 |
入選 | 1 | 自分色の世界 | 東北生活文化大学高等学校 |
第7回TSB(東北生活文化大学)アートコンペティション総評
審査委員長:東北生活文化大学 学長・佐藤一郎
第7回TSB(東北生活文化大学)アートコンペティションの審査は、令和元(2019)年12月20日(金)に行われました。審査委員長は、わたくし佐藤一郎(東北生活文化大学 学長)、そして三上秀夫(東北生活文化大学 美術学部 教授)、鈴木専(東北生活文化大学 美術学部 教授)、鶴巻史子(東北生活文化大学 美術学部 准教授)の4名が審査員をつとめました。北折整(東北生活文化大学 美術学部 教授)が審査進行をつとめました。応募作品は、昨年度よりも倍増し、107点となりました。審査員一同、応募作品に対して、厳正な審査が行われ、大賞1点、準大賞1点をはじめ、優秀賞10点、佳作賞10点が選ばれました。詳細は、別掲の通りです。
応募作品は、「自分」というテーマのもとに描かれた作品であり、自画像を中心に、今、現在の自分自身を見つめ、制作した作品がほとんどです。高校生である自分自身が抱えている切実な問題を真摯に表現しようとしている熱気を、どの作品にも感じました。
「表現」という日本語は翻訳語であり、その英語の原語は、Representation、あるいはExpressionです。リプレゼンテーションは、その人の目で見た三次元の世界を、時間が加われば四次元の世界を、画面という二次元の世界に再現模倣することを意味します。いわゆる「写生、写実表現」を指し示しているといえるでしょう。目という感覚器官によって、物を見ることができると思ってしまいますが、それまで生きてきた上での、触覚、味覚、聴覚、嗅覚などの感覚器官を通して外部との接触、すなわちさまざまに経験してきた積み重ねが、物を見るという視覚を確かなものにし、脳の前頭葉が鍛えられるわけです。
現在、フランス、パリのルーヴル美術館では、没後500年を記念して「レオナルド・ダ・ヴィンチ」の大展覧会が開催されています。レオナルド・ダ・ヴィンチは、「絵画は科学である。」と述べていますが、それには「経験」というフィルターを通さなければならいとしています。そして、「例えば、物体とは何か、物体にできる陰影、明るさ、光、闇、色、形姿、場所、遠さ、近さ、運動とは何かが絵画面に提示されるが、これが絵画における科学である。それらは画家たちの精神に宿り、ついでそこから手作業によって絵画が制作される。絵画制作は、前述した科学よりもはるかに優れたものとなる。」としています。
エクスプレッションは、原義は「圧力をかけて絞り出す」という意味です。自分自身を絞り出して外へ出していく、すなわち自分自身の内面の表現意欲を画面に実現しようとすることです。いわゆる「自己表現」を指し示しているといえるでしょう。
これからの世界は、今までの価値観が通用しなくなり、AI(人工知能)が急速に発達し、AIに使われる人間とAIを使う人間とに二分化されるのではないのかという社会構造の変化が予測されてもいます。しかし、美術を目指し、私自身のリプレゼンテーションとエクスプレッションを今現在追求することは、個人個人の創造性と想像性を育み、そのことが多様化する社会のなかで通用する職業人としての将来を約束することになるにちがいありません。
●大賞 「自己愛」 東北生活文化大学高等学校
こちらの作品「自己愛」は、シャボン玉を吹く自画像であり、正面像であり、ストローも前方正面を向いているだろうという設定です。そのアイディアはコンポジションの妙ともいえ、他に類例を見ないものです。しかし、その難しさを、本人がどの程度認識して描画を進めているのかは、わたしには分かりませんでした。また、ジェッソの下塗りを施し、画面のマティエールも独特です。画面に粗いテクスチャーを作り、その粗面を生かした画面作りであり、寒色と暖色を重ね、中間色調を形作り、丁寧に作業を積み重ねています。マティス、ボナールなどのモダニズムとの親近性を感じます。
いわゆる受験絵画の一定水準を保つ優品といえるでしょう。さらに、もう一歩進めるには、鏡の中の自分との対話をするブラッシ・ストロークが必要になるでしょう。そして、印象派の画家ドガが述べる「デッサンは形ではない。ものの形の見方である。」というところまで追求してみたいものです。描かれるものとものとの関係性を、自分なりに探究してみようとする意欲が必要なのかもしれません。
泡のように、はかなく消え去ってしまうシャボン玉は、球体であると同時に、透明でもあり、表面はガラスのように平滑な物体であり、入射光はスペクトルとなって反射もしています。ニュートンの光学理論が一般化した19世紀に遡ってみることも無駄ではありません。西洋絵画における「王道の科学」の追求であるといえるでしょう。
鴨長明「方丈記」冒頭の「行く川のながれは絶えずして、しかも本の水にあらず。よどみに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとゞまることなし。」を思い出します。しかし、自分がいかにはかない存在であっても、今、現在の自分自身の生きる証を誠実に奏でられるようにと、絵画に打ち込むと、きっと未来が開けてくるでしょう。
●準大賞 「香」 北海道おといねっぷ美術工芸高等学校
こちらの作品「香」は、支持体である水彩紙に水彩絵具が染み込むように定着する、そのような色調による演奏の美しさが際立つ優品です。自分自身を託した少女像は繊細でかわいい表情ではありますが、しっかりと正面を見据え、その眼光の鋭さには引き込まれます。わたくしは、高校生時代、宇野亜喜良の少女像のイラストレーションに憧れましたが、雰囲気に同質なものを感じました。
背景の装飾的部分と少女像の写実的部分がほどよく組み合ったコンポジションであり、画面の四辺には額縁の枠のようになった、天鵞絨の帯が走っています。四隅には、金属質の鋲が打ってあります。品位のある趣味性の現れともいえるでしょう。さらに、画面上部には正円が配置され、ささやかな草花が描かれています。それらの正円には、一部、光輪のようなものが付加し、そこには三角形と涙型の装飾文様が施されています。イタリアルネッサンスの画家フラ・アンジェリコのような「聖なるものの表現」へとつながるのかもしれません。
「俗なるものの表現」として、下半身の描写があるのでしょうか。最初、よく理解できずにいましたが、わたしなりによく観察すると、膝小僧が前に突き出しているポーズのようです。上肢、下肢の輪郭線、とくに左足膝小僧の輪郭線が、腰の輪郭線とほぼ重なっており、前後関係がわかりにくく、左足下肢部分の緑色色調もなぜそのように塗ってあるのでしょう。いずれにせよ、下半身、とくに下肢部分の形態と色彩の描写をもっと工夫する必要があると思います。