常日頃、研究活動における創造力と想像力の大切さを肝に銘じると同時に、特に想像力については、大学の講義においても多くの学生に語りかけている著者であるが、自身の想像力の限界を痛感させられることが次々に勃発している現在に生きる若者は、今後前途多難かもしれない。2020年3月11日に発生した東日本大震災が契機になった原子力発電所の深刻な事故については、心ある原子力の専門家はもちろん、私のような原子力の門外漢でも以前から十分に想像ができた。しかし、現在進行中のコロナ禍は著者の想像を大きく凌駕した。さらには、これも現在進行中のロシアのウクライナに対するなりふりかまわない傍若無人で露骨な侵略は、言語道断を通り越しどのような言葉でも非難し難い行為であり、著者にはまったく想像も及ばなかったことであり、世界史に残る大惨事である。一方、この侵略行為は、現在のロシア社会の中枢の人間の愚かさを、まざまざと見せつけられる現象だと認識せざる得ない。どのような教育課程を経てこのような人間が出来てしまうのか、空恐ろしくなる。日々の教育活動の中において著者の担当は化学に関する分野であるが、化学も使い方次第で人類にとって大きな災いを及ぼすことを多くの実例が示しつつある現在、講義をとおして正確な知識と事実を学生に伝えることで、個々の学生の人間性醸成に貢献したいと考える。また、化学だけでなく、様々な知識や技術は、それを使用する人間によって善にも悪にもなることも明らかで、大学における人間教育と、それをサポートするための自己研鑽に今後も努めたい。