3月15日、やや肌寒く曇り空ではありましたが、保護者にも参列いただき、「令和6年度卒業証書・学位記授与式」を挙行いたしました。
卒業生の皆さん、おめでとうございます。
令和6年度 卒業証書・学位記授与式 学長式辞
東日本大震災、コロナ感染禍、ウクライナ、あるいはパレスティナにおける戦争、大船渡の山林火災と、自然および人間の力は、時として暴力的であり、破滅的な惨状を曝しております。時間、空間が短縮され、網の目のように形成された、この「グローバルな地球社会」で起きるさまざまな事象は、ここ「ローカルな地域社会」でも、その影響から逃れ出ることができません。
とはいっても、一昨年来、コロナ禍も落ち着き、御来賓、保護者の皆さんに、多数ご列席いただき令和6年度卒業証書・学位記授与式が挙行されることとなりました。東北生活文化大学、ならびに東北生活文化大学短期大学部を代表いたしまして、皆さんに御卒業のお祝いを申し上げます。ともに、今日を待ち望んでおられた保護者の皆様に対しましても、衷心よりお祝い申し上げます。
もともと「いはふ」という言葉は、魂を鎮めるために精進潔斎を表す言葉だそうです。近代では、幸福な光り輝く現状を讃美し、将来もかくあるべしと、幸せな状況をみんなで喜び合う意味になったのだと、言われております。
栄えある今日を迎えた卒業生は、東北生活文化大学 家政学部家政学科服飾文化専攻15名、同健康栄養学専攻44名、美術学部美術表現学科50名、の計109名であります。
東北生活文化大学短期大学部 生活文化学科食物栄養学専攻29名、同子ども生活専攻23名、の計52名。大学、短期大学部、合計161名であります。
三島学園東北生活文化大学、ならびに短期大学部の歴史を紐解くと、明治33(1900)年、東京で法学を学んだ三島駒治が、「東北法律学校」を設立、続いて三島駒治、よし夫妻によって創設された「東北女子職業学校」にまで遡ります。衣食住という「生活と文化」を基軸に据え、現実の社会生活に貢献しうる「実学」を重視する教育研究機関として、明治、大正、昭和、平成、そして令和と、東北における日本社会の近代化の一翼を担ってきました。本学は、生活することの原理、原初に立ち返り、学科、実験、実習、実技授業を重ね、実証していくという教育研究の姿勢を貫いております。いわば、『学問のすゝめ』で福沢諭吉が語る「サイエンスとしての実学」を、ICT(情報通信技術)を活用して、実践していると言えないでしょうか。
短期大学部での食物栄養学専攻の「令和6年度校外実習報告会」、子ども生活専攻の「令和六年度保育実習報告会」にわたくしは参観しました。一ヶ月に及ぶ教育実習という実学実習を通して、園児と共に日々成長していく学生の様子が垣間見れました。たとえば、「心に残った出来事」として、「あまり話さない女の子がいました。私は毎日声をかけたり、一緒に遊んだりしながら過ごしていました。そして実習最終日、その女の子の保護者の方から「いつも娘が先生のおかげで毎日楽しいって家で話していました。ありがとうございました。」と言葉をかけていただきました。私は、とても嬉しくなって、実習に対する達成感を感じました。このことがきっかけに、これからの実習も精一杯頑張ろうと思いました。」と、記されておりました。
家政学部の「令和6年度大学家政学科専門研究・課題研究発表会」、「令和6年度教育実習・栄養教育実習報告会」、美術学部の「第57回卒業制作展」などにおいては、真摯に学業、制作に立ち向かい、プレゼンテーションのスキルも身につき、成長を感じることができました。
「体育祭」「大学祭」など、さらにエルパーク仙台スタジオホールでの第17回「ファッションショー公演」での、皆さんのエネルギー溢れる舞う姿を拝見しても、わたくしは成長を感じ取っています。
キャンパスの入り口にある紅梅もほころび、春の訪れを感じる今日この頃です。卒業生の皆さん。春に梅花、桜花咲きほこる、この虹の丘の東北生活文化大学、東北生活文化大学短期大学部で過ごした日々を胸に抱き、集い、懐かしんでいただきたいと思っています。学生時代の友情は一生続きます。卒業後、心の奥深くに宿る本来の真の「自分自身、自己」の姿を、一生懸命に働き生活するなかで、ふと自覚できる瞬間がきっとあることでしょう。そうなりますと、個人としての主体性が発揮でき、身近に友達もでき、人生百年時代の楽しみや自由を享受できるのではないでしょうか。
このような自己実現を一人ひとりが実践しますと、「ローカルな地域社会」、東北、仙台の「生活と文化」が、多様性に満ちたエネルギーの束となって生み出されるのではないでしょうか。
21世紀は、「グローバルな地球社会」と「ローカルな地域社会」が組み合い、結びつかなければなりません。その理想的な形を実現すべく、卒業生の皆さんをはじめ、若人の活躍する21世紀があると確信しております
教職員、同窓生一同、皆さんの御卒業を心からお祝いし、本来の幸せをつかむために「励み、謹み、慈み」、そして「地球社会」および「地域社会」の一員として成長なさることを祈念し、式辞といたします。
令和7年3月15日
東北生活文化大学・東北生活文化大学短期大学部 佐藤一郎