式 辞

 東北生活文化大学、東北生活文化大学短期大学部を代表いたしまして、卒業生の皆さんに御卒業のお祝いを申し上げますとともに、一日千秋の思いで今日を待ち望んでおられた保護者の方々に対しましても、衷心よりお祝い申し上げます。

 宮城県からは、オミクロン株による第六波の拡大を防ぐ「緊急特別要請」が今月21日まで延長されております。本県の累計感染者は、4万人をはるかに超え、5万人に迫る勢いになっております。このようなコロナ禍のため、卒業式はここ体育館において規模縮小・時間短縮により挙行されることとなり、大変残念ではありますが、来賓・保護者・在学生には御遠慮いただく形となりました。しかし、本日このように挙行できますことは、教職員一同にとりましても、大きな喜びでございます。

 栄えある今日を迎えた卒業生は、東北生活文化大学 家政学部家政学科服飾文化専攻8名、同健康栄養学専攻41名、生活美術学科 36名の計85名。そして 東北生活文化大学短期大学部 生活文化学科食物栄養学専攻24名、同子ども生活専攻40名、の計64名。大学、短期大学部、合計149名であります。

 三島学園東北生活文化大学、ならびに短期大学部の歴史を紐解くと、明治33(1900)年、東京で法学を学んだ三島駒治が、「東北法律学校」を設立、続いて三島駒治、よし夫妻によって創設された「東北女子職業学校」にまで遡(さかのぼ)ります。一昨年、令和2年10月27日に創立120周年を迎えており、東北の中心地仙台に根付いた、伝統ある教育機関としてこれまで親しまれてきました。

 三島学園には、三島よし校長の親族である齋藤實(まこと)子爵(第30代内閣総理大臣)御手植えの紅梅白梅が毎春咲いています。旧正門の近くで、今日見てまいりましたが、白梅が蕾を膨らませ、一輪二輪と開花し始めております。気(き)淑(よ)く風(かぜ)和(や)はらぐなか、清く、正しく、健やかに、時代とともに年輪を重ね、咲いてきた梅花であります。このように、三島学園も年輪を重ね、今後も歩んでいきたいと思っています。

 「東北女子職業学校」を母体に、衣食住という「生活と文化」を基軸に据え、現実の社会生活に貢献しうる「実学」を重視する教育機関として、明治、大正、昭和、平成と、東北における日本社会の近代化の一翼を担ってきました。昭和26年(1951)三島学園女子短期大学、昭和33年(1958)三島学園女子大学が設置され、三島学園創立以来の女子教育の伝統を受け継ぐと同時に、生活することの原理、原初に立ち返り、実験、実習を重ね実証していくという教育と研究の姿勢を貫いております。いわば、「学問のすすめ」の福沢諭吉が語る「サイエンスとしての実学」を大事にしていると言えないでしょうか。

 一昨年から現在に至るまで、新型コロナウイルスが蔓延し、マイナスの意味で、「グローバルな地球社会」の大波に呑み込まれてしまいました。対面授業が一時期できなくなり、遠隔授業をやらざるをえない状況もありました。卒業式に列席している皆さんも、一昨年は夏休みもほとんどない過酷なカリキュラム編成であり、大変な思いをしたにちがいありません。それにもかかわらず、短期大学部食物栄養学専攻「校外実習報告会」、子ども生活専攻「のはらうた」、「大学家政学科専門研究・課題研究発表会」、「教職課程教育実習報告会」などにおいては、プレゼンテーションのスキルも身につき、真摯に学業に立ち向かっている姿を拝見し、とても成長を感じることができました。

 今後、さらに、地球社会のグローバル化が押し寄せ、高度情報化社会に対応する人材養成が急務とされています。そのためには、コミュニケーションスキル、数量的スキル、情報リテラシーなど実生活に必要なAI技術、それと、人文・社会科学、文化・芸術などの幅広い教養の涵養が求められています。このような「21世紀型市民」の人材養成を担う大学機関として、本学はその役割を演じようと、スタートラインに並んでいます。オンライン大学祭やファッションショーでの、皆さんの一生懸命取り組む姿を見て、私はそのように感じ取っています。

 「令和」という元号のもととなっている「梅花の歌 三十二首」では、大伴旅人の居館に集まった人々が互いに歌を詠い合い、楽しいひとときを過ごしております。卒業生の皆さんも、春に梅花、桜花咲きほこる、この虹の丘の東北生活文化大学、東北生活文化大学短期大学部で過ごした日々を胸に抱き、集い、末長く懐かしんでいただきたいと思っています。学生時代の友情は一生続くものです。そのために、本学の校訓「励み、謹み、慈み」が必要なのかもしれません。そして、本学のこの校訓を胸に刻み、心の奥深くに宿る本来の「自分自身、自己」の姿を、一生懸命働くなかで、ふとみずからが自覚できることがあるかもしれません。そうなりますと、個人としての主体性が発揮でき、人生百年時代の楽しみや自由を享受できるのではないでしょうか。このような自己探求を一人ひとりが実践していきますと、「ローカルな地域社会」、すなわち東北の生活と文化について、多様性に満ちたエネルギーが束となり、それらの豊さが生み出されてくるのではないでしょうか。

 21世紀は、「グローバルな地球社会」と「ローカルな地域社会」が組み合わさり、結びつかなければなりません。その理想的な形を実現すべく、卒業生の皆さんをはじめ、若人の活躍する21世紀であると確信しております。東日本大震災から11年が経過しましたが、皆さんが社会に貢献できることがきっとあるのです。

 教職員一同、同窓会一同、卒業生の皆さんの御卒業を心からお祝いし、本来の自己探求に励み、「地球社会」および「地域社会」の一員として成長なさることを祈念し、式辞といたします。

令和4年3月15日

東北生活文化大学・東北生活文化大学短期大学部 学長 佐藤一郎

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