服飾文化専攻では、5月末~服飾講座(全8回)を配信します。
専攻での教育や研究内容に関連する生活文化や服飾文化、教育分野等の様々な知識をお伝えしていきます。(毎週月曜配信)
服飾講座⑤「心理学に関する2つの見方」
心理学は主に人間の行動や反応を研究対象にしている。しかし、一般の人は、行動や反応がなぜ起きたのか、その心理を分析すること、つまり「心がわかる」とか「心を読む」ことが専門家の仕事であると考えている(下図1のAの矢印)。また、心理学を勉強すると、そのようなことができるようになると考えている人が多い。しかし、実際はそうではない。要因(内因と外因がある)として、どのような人にどのような援助や教材を与えたら、望ましい、より良い行動や反応が形成されるか、という考え方をして、行動の変化を促したり、援助したりすることを、本当の専門家は行っている(下図1のBの矢印)。つまり、行動や反応から要因を分析するのではなく、要因の組み合わせから行動や反応の変化を促していくことが本当の専門家の仕事である。
河合隼雄(著)「人の心などわかるはずがない」(「中学生までに読んでおきたい哲学⑦人間をみがく」あすなろ書房)では、「未来の可能性」、「未知の可能性」という表現が出てくる。やはり、「心がわかる」ことは難しいし、不可能である。大切なのは、行動の変化の可能性を期待して、見守りながら、援助したり、促したりすることであると考える。学生と一緒に考えたい問題である。
A:行動・反応から要因を分析 | |||||||||
行動・反応 | →→→→→→→→→→→→→→→→→→→ |
要因(内因、外因) |
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B:要因から行動・反応を援助、促進 | |||||||||
図1 心理学に関する2つの見方
河合隼雄(著)「人の心などわかるはずがない」(松田哲夫編「中学生までに読んでおきたい哲学⑦人間をみがく」あすなろ書房)